今日は久しぶりの朝日カルチャーセンター、講座の日。総合テーマは「ジャズレーベル徹底研究」で、今日はその第1回目、ブルーノート。まあ、この辺りは始終やっているところなので、準備は比較的早くできた。
開始時間を待っていると、前回の徳永さんの講演を「途中退席」した2名のうち、Fさんが現れる。この方は「つまらないから」と言って帰った「熱心なライヴファン」とは別人。そのFさんに退席理由を聞くと、「だって、趣味なんですから」と意外な返答が返ってきた。どういう意味ですかと尋ねると、「選曲が徳永さんの趣味に偏っているので(面白くないので)途中で失礼しました」と言うではないか。
ナルホドと思った。というのも、私も途中から「これは徳永さんの音楽的趣向が強く現れているな」と感じたからだ。ただ私は、その「趣味」を特に悪いものとは思わなかったという違いがあるが、、、 ともあれ、Fさんの直観力のスルドさは、とうてい「ジャズ初心者」どころではない。
ブルーノートの方は最初の録音、アルバート・アモンズ《ブギウギ・ストンプ》から、オーネットの『ゴールデン・サークル』まで、予定を30分ほどオーヴァーしてしまったが無事終了。直ちに常連受講者、蓑田さんら6名と麹町の『モリガンズ』に向かい、まずはギネスを1パイント。
さっそくFさんに話の続きを聞くと、要するに期待したような「日本のジャズの現状」についての知識が得られなかったことが不満の原因のようだった。まあ、私も似たような感想を持ったのだが、事前に徳永さんから「私の視点でやる」という情報があったので、その点はさほど問題にはしなかったのだけど、「東京のジャズシーン」というタイトルだけで来たFさんにしてみれば、もう少し日本のジャズについての包括的視点がほしかったということなのだろう。付け加えればFさんは、このとき初めて知ったのだがHさんと共に熱心な森山ファンで、ライヴにもかなり足しげく通っているそうな。
次いで、モンダイの「つまらない発言」のHさんに真意を尋ねると、これまた意外な返答が返ってきた。Hさんに言わせれば、徳永さんが挙げたミュージシャンのライヴはすべて何度も、というかHさんに言わせると、(根拠は不明ながら)徳永さんよりゼッタイ多く観ており、何も新情報が得られなかったことと、例えば、川嶋さんのライヴは徳永さんが挙げたデュオよりもっと面白い演奏があるのに(観たことがあるのに)、なんであれを出したのかがわからないというではないか。ウーム、そういうことでしたか。Hさんもジャズ初心者どころではアリマセンでした。
このときFさんから「どちらにしてもライヴの良さはCDでは伝わらない」と至極マットウなご意見が出され、それを言っちゃあオシマイよ、みたいなことになったのだが、お二方とも私が想像していた以上にキビしい視点で講演者を見ており、私も高い受講料をいただいている身、他人事ではないとワキの下から出かかる冷や汗を補給するべくギネス2パイント目に。
私がこの場のお二方のご意見を「日記」に書いてもいいですかと念を押すと、異口同音に「ガンガン書いちゃってください」と強い口調。これは良い勉強になりました。つまり、私の徳永講演評は「そんなに悪くない」なのだが、前回の日記に書いた音楽関係者4名、Sさん、Mさん、Tさん、Hさん(今日のHさんとは別人)といい、今日のお二方といい、私よりはるかに点が辛い。
もちろんいーぐる掲示板には絶賛評が2件も出たのだから、良かったという人も大勢いるはずで、つまりは「スタンスにより評価が分かれる」イヴェントであったことに異論はないはずだ。私が音楽プロデューサーとしての徳永さんに求めるのは、「有意差」なんて、オトナゲナイこと言ってないで、批判者の意見にも耳を傾けようとする謙虚な姿勢である。