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think, 37摂津さんという非常に哲学に詳しい方から、私と益子さん、miyaさん、相澤さんによってジャズサイトcom-post誌上で交わされた「往復書簡」に対する、章(つまり発言者)を指定した具体的なご批判をいただきました。それに対するご返事は前回のthink,…

think.36 番外編 摂津さんへのお答え・2 【com-post『往復書簡』へのご批判】まず最初に申し上げておけば、今回摂津さんにcom-post「往復書簡」への具体的ご批判をいただいたこと、心から感謝しております。先日来の摂津さんのご質問にどうお答えすべきかず…

think.35 番外編 攝津さんへのご返事・1 【ジャズ美学成立の困難について】「いーぐる掲示板」に攝津さんが書き込まれた質問に対するご返事です。議論が多岐にわたっているので一つずつご返事していくこととします。最初に申し上げておけば、これは「質問に…

think. 35 【いっきさんの「いーぐる掲示板」への書き込みに対する感想】think. 34の私の意見に対するいっきさんの見解が「いーぐる掲示板」に書き込まれたので、それに寄り添う形で雑感を述べてみたい。ちなみに、「いっき」というのはブログ上の名前で、私…

think. 34 【中山康樹擁護と、“黒い耳”“白い耳”の話】むしろこれからが本筋なのである。原さんは言う。確かに一部のヒップホップ関係者からは、中山さんの著著について重箱の隅を楊枝で突くような批判がなされているが、むしろそうした声に対しては中山さん…

think. 33 【カニエ・ウェストを巡る、原雅明さんとの酒席での“雑談”】前回think. 32を書いたのが2010年11月22日、しかも「この項、未完」となっている。完全に1年以上ほったらかしだ。まあ、同年12月にNTT出版から上梓した『ジャズ耳の鍛え方』が、「その続…

think.32主知主義批判の続きの前に、またちょっと哲学私見を追記しておく。think.31で、私の哲学に対する姿勢は哲学自体に対する知的好奇心と、道具としての哲学の二つに分かれると書いたが、当然その各々で哲学に対するスタンスは異なる。前者では、例えば…

think.31哲学に対する私見を述べておく。その前にひと言断っておきたいのは、世間の哲学に対する偏見である。それは、あまりにも哲学を後生大事なものと崇め奉る心理の裏返しがもたらす、無意味な反発だ。これは芸術に対する態度と同じで、芸術、哲学を語る…

think.302008年の9月17日にthin.29-1を書いて以来、もう2年が過ぎてしまった。中断の理由は、議論の場がcom-postの『往復書簡』に移行したこともあるが、「いーぐる掲示板」と同じように、ごく一部の読者は私の議論に対する賛否以前に、(当方の説明不足もあ…

think.29-1人はキカイのようにフラットに世界を見ることは出来ない。think.28で言及したように「類概念」を構築する際には必ず「暗黙の第3項」が作用している。この事実は構造主義言語学に多少とも通じた人間なら直ちに了解するところだろう。人はみな固有の…

think.28子供の頃、「♪ 出た出た月が、まあるいまあるいまん丸い、ボンのような月が」の「ボン」の意味がわからなかった。その頃私の家のお盆は長方形だったのである。人は何かと何かが似ていたり、それほどでもないことを、直感的に把握している。だから、…

think.27ジャズの楽しさ面白さ、そして感動を感じ取れる人とそうでない人がいる。このことを敷衍すれば、アート、芸術、美、と言われるような対象を理解できる人と、そうでない人がいる。この事実は私たちの周囲を見渡せば、経験的に理解できるだろう。 ここ…

think.26ジャズの解説でときどき「この曲はAABA32小節で云々」というような文章に出会うが、こうした類の説明にさほど意味があるとは思えない。そんなことは聴けばわかるからだ。といっても、平均的音楽ファンがそうした形式を認識できるという意味ではない…

Think,25以下の論考は、林建紀さんが教えてくれた「朝日新聞」夕刊の連載インタビュー「人生の贈り物」での、中島誠之助氏の発言にヒントを得たものです。中島さんはTV「なんでも鑑定団」でお馴染みの、骨董目利きだ。発言要旨は、「骨董の故事来歴は知識で…

think.24これからthinkは以前と違って、気軽な「考えるメモ」として書き続けていこうと思う。まず最近の「いーぐる掲示板」上の興味深いご意見を糸口にして、、、 人間は人の表情を読み取ることが出来る。怒っている顔、笑っている顔、そして皮肉な表情や、…

think23

think.23私的メモのつもりで思いつくまま書いてみよう。だから以前書いたことと重複するかもしれませんが、ご容赦。 私の理解では、音楽理論を含む感覚芸術の理論は、物理学の法則のように、人間がいてもいなくても成立するような普遍的性格のものではなく、…

think22 -- ジャズを聴くことについての原理的考察 第22回

気が付いてみたら、前回thinkを書いてから8ヶ月も経ってしまった。なぜこれほどまで間が開いてしまったかについては、目前の締め切りに追われた、などという瑣末なことどもを含め、いくつかの理由がある。しかしそのもっとも大きなものは、この1年ぐらいの…

think21 -- ジャズを聴くことについての原理的考察 第21回 

ジャズを聴き始めた人がジャズ的価値を身体で体得するには、未知のスポーツに挑戦するのと同じように身体訓練が必要であり、それはミュージシャンが演奏技術を習得する過程と原理的に等しい。要するにこれは「ジャズ耳」を作り上げる作業であり、目的はジャ…

think20 -- ジャズを聴くことについての原理的考察 第20回

ジャズという音楽の価値を決めるのはジャズファンの共同主観であるが、近年は、もっぱら個人の趣味趣向を優先するあまり、ジャズはどういう要素を重視する音楽なのか、ということに対する感覚が鈍くなっている層が増えている。このところジャズ的価値に対す…

think19 -- ジャズを聴くことについての原理的考察 第19回

ジャズ体験の総体とジャズ理解の程度に相関関係があるとしても、比較的短期間に理解が進むファンと、長年ジャズを聴き続けていながらなかなかジャズの聴き所が掴めない人がいるのはどうしてだろうか。 ライヴ体験はミュージシャンの調子によって出来不出来の…

think18 -- ジャズを聴くことについての原理的考察 第18回

ジャズの価値を決めるのは、歴史的に集積されてきた多くのジャズ・ファンの共同主観であるとして、やはりある程度明確にしておかなければいけないのは「ジャズ・ファン」の範囲だろう。その作業が済んで、ようやく本考察の最終目標である「ジャズ的価値」と「…

think17 -- ジャズを聴くことについての原理的考察 第17回

この不定期連載も17回目を迎え、気長にお付き合いいただいてきた数少ない読者の方々には、だいたい問題の所在がご理解いただけたことと思う。だが今まで私が述べてきたことは、心ある人々にとっては言わば常識であって、取り立てて目新しい事実は一つもない…

think16 -- ジャズを聴くことについての原理的考察 第16回

芸術活動を意味あるものにするには、作家のみならず享受者にも責任があるといったが、そのことをもう少し考えてみよう。そのために、ちょっと唐突かもしれないけれど「民主主義」についておさらいしてみたい。 みんな、民主主義には「直接民主主義」と「間接…

think15 -- ジャズを聴くことについての原理的考察 第15回

人の感覚を拡張、深化させるものが芸術であるという、私流定義に従ってルイ・アームストロングの演奏を聴いてみれば、まさに彼の音楽は芸術であった。しかしそのことを理解するに至るには、根源的なジレンマが横たわっていることを見逃してはならないだろう…

think14 -- ジャズを聴くことについての原理的考察 第14回

ところでジャズを芸術音楽としての視点から眺めてみるという作業の前に、ちょっとした下ごしらえが必要だと思う。それはジャズとポピュラー音楽の関係だ。あるいは、ジャズは果たしてポピュラー音楽であるのか、という設問に置き換えても良いだろう。これは…

think13 -- ジャズを聴くことについての原理的考察 第13回

仮に、人間の感覚を拡張し、深化させるものを芸術であると定義してみよう。言うまでも無くこんな内包は大きすぎて、余計な外延を大量に呼び込んでしまう。マリファナだってヘロインだって芸術だということになりかねない。もちろんそんな俗受け狙いの主張を…

think12 -- ジャズを聴くことについての原理的考察 第12回

前回、ありがちな誤解を防ぐために、とりあえず自分のパーカー体験は知的理解ではないと言ったが、ここまでの連載を通読していただいた皆様には、もう少し本質的な話をしてもよいだろう。より深いレベルで考察すれば、数学の問題が解けるということも、ある…

think11 -- ジャズを聴くことについての原理的考察 第11回 

さていよいよこの考察の主たる目的「ジャズが分かる」とはどういうことか、自分自身のパーカー体験に基づいて考えてみることにしよう。まず私が初めてパーカーを耳にしたのは20歳、ジャズ喫茶をはじめたときと時を同じくしている。すでに他の本で書いたこと…

think10 -- ジャズを聴くことについての原理的考察 第10回

近頃はやりの「複雑系」とやらに挑戦してみようと思い、「自己組織化と進化の論理―宇宙を貫く複雑系の法則」(スチュワート・カウフマン著、日本経済新聞社刊)を読んでいたら、非常に面白い記述にぶつかった。 生命発生の重要な謎である、高分子化合物がな…

think09 -- ジャズを聴くことについての原理的考察 第9回

よく人は音楽との出会いを神秘めかして語りがちだが、それは思い込みに過ぎない。もっともその思い込みにはそれなりの理由がある。まず、人は自分が属する文化全体を外から眺めることは難しい。また、自分が属する時代を客観的に把握することも困難だ。つま…